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アメリカでもヨーロッパでも政権政党が変わるのですが、変わらないのはロシアと中国と日本だけです。岸田首相は、「アベノミクスからの脱却」を図りたいはずだと思います。『岸田ビジョン』を読むと、明らかにそれがわかります。
しかし、「所得倍増」という掛け声がいつの間にか「資産所得倍増」になったり、宏池会は伝統的に「護憲」のはずが、首相になったとたん「憲法を変えなければ」と突然言い出したり、安倍派からの圧力なのか安倍派への忖度なのか、一貫しません。
ジャーナリストの池上彰先生は前回の参議院選挙のとき、テレビ東京の選挙特番で岸田首相に直接聞いています。「あなたは選挙前に出版した本の中で、自分の派閥の宏池会は護憲リベラルだと書いています。それなのに、なぜ憲法改正と言い出したのですか?」。
そうしたら、「護憲というのは、憲法は大切なものという意味です。その大切な憲法をいま変えようということをやろうとしているのです」とかわしました。追及されるのは明らかですから、答えを準備していたのでしょう。
池上彰先生は、岸田さんは首相になって何をやりたかったのでしょうか。ただ首相になりたかっただけなのでしょうか。つい、そんなことを思ってしまいます。と池上彰さんの著書に書かれていました。「政権を守る」ことが大事になってしまっているようにみえます。
自分の思想信条よりも政権を維持したい気持ちのほうが勝っているのでしょう。広島出身なので、平和への思い入れは強いはずですが、防衛費に関してもGDP比として倍増を決めました。世界の軍事費というとき、日本だけは軍事費ではなく「防衛費」といいます。
つまり日本は、軍事力を持たないという建前になっているので、あくまで防衛費という言い方になるのです。戦争をするのはイヤだけれど、自国を守るためには防衛費を増やさなければと、いまや日本人の6割が防衛費の倍増は仕方がないと思っています。
岸田首相が会長を務める宏池会は、歴史的に「軽武装・経済重視」を志向してきました。日本は防衛費をGDPの1%に留めるという方針を守り、「専守防衛で外国を攻めることはしません」と、世界に安心感を与えてきました。
しかし、北朝鮮が何度もミサイルを発射するし、中国も軍事力をどんどん拡張しているし、ロシアはウクライナに侵攻。ロシア、中国、北朝鮮の脅威に備えるべきだということで日本人の意識が変わりました。
でも、新たに購入を決めた巡航ミサイル「トマホーク」は、1970年代の技術のミサイルです。モデルチェンジをした最新型とはいえ、いまさらそれを400発も買ってどうするのか。 在庫一掃セールにつき合わされているとしか思えません。
湾岸戦争のとき、アメリカがイラクに対してトマホークを大量に発射しました。あれはGPSを使って自らの位置を確認しながら目標に突入します。ピンポイント攻撃に成果を上げたと言われました。しかし、やがてイラク軍も反撃の方法を見つけます。
トマホークは、敵のレーダーに映らないように低空で飛行し、GPSの表示に従って途中のルートを決めます。その結果、ある特定の場所でミサイルが方向を変えることがわかってしまいます。
イラク軍は、トマホークが向きを変えるときはスピードが落ちるので、その場所で待っていて、下から自動小銃や機関銃で撃ち落とすことができるようになったのです。この時代遅れのミサイルが、果たしてどれだけの威力を発揮するのであろうか。
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