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人間には一般的に、朝から午前中に力を発揮しやすいタイプと、夕方から夜に発揮しやすいタイプとがいます。このように人を朝型、夜型と分け、その中間の人を中間型と分類する方法があります。
これは有名な朝型夜型質問紙という質問紙の得点で分けるやり方で調べられます。別の質問紙(ミュンヘンクロノタイプ)を使った簡易な方法として、休日の入眠時刻と起床時刻の中間時刻を調べて評価する方法があります。
これは、平日は無理に早めに寝て、起床していると、本来の自分自身の体内時計を反映していないのですが、休日は本来持っている自分自身の時計を反映しているという考え方がもとになっています。
中間時刻は、たとえば2時に寝て6時に起きるとその中間の2時となり、もし2時に寝て10時に起床すると6時となります。中間時刻から類推する朝型、やや朝型、中間型、やや夜型、夜型の目安の数字は、それぞれ2時、3時、4時、5時、6時となり、調査では中間型付近が一番多くなっています。
皆様も何となく、自分の家系は早起きのようだとか、いや宵っ張りだろうなと感じることもあるかもしれませんが、実際に朝型や夜型には遺伝子がかかわっているのではないかと推測されます。それを裏付けると思われるデータもあります。
睡眠相前進症候群のような朝型の家系を調べると、 Per2遺伝子で一部変異が見られ、睡眠相後退症候群のような夜型の家系ではPer3やClock遺伝子の一部が変異していたのです。遺伝的な素因によって朝型や夜型になっている場合はあると言う訳です。
最近の700万人を対象としたゲノムワイド関連解析研究という新しい方法の調査では、朝型に関連する遺伝子が二十数個見つかり、朝型は気分障害や統合失調症のリスクが低いことがわかりました。このようにいろいろな因子で朝型を形成していると思われます。
遺伝的要因について述べてきましたが、とはいっても、大多数の人は学業・職業や他の社会的要因で生活リズムがずれ、朝型や夜型になっている場合が多いことも事実です。
サッカー選手を朝型、夜型に分け、ジャンプ力、6分間ダッシュ、俊敏性などを9時と18時に調べた結果、朝型は朝のトライアルで、夜型は夕方のトライアルで好成績であり、朝型も夜型も逆の時間帯では成績は悪いという結果となりました。
自転車漕ぎでどの時間帯に最大のパフォーマンスが出せるかという実験を、朝型、中間型、夜型で施行したところ、朝型は14〜15時、中間型は16〜17時、夜型は20〜22時といった時間帯に最大値がありました。また朝型では日内変動は少なかったのですが、夜型は朝のパフォーマンスが低く、70%程度しか力を発揮できませんでした。
以上のようなスポーツにおける調査でも、スポーツ以外の調査においても、パフォーマンスを高めるためには、朝型は午前中を有効に使い、夜型は夕方から夜を有効に使うように計画してトレーニングだったり大事な場面だったりを組んでいけると、良いと思われる結果が出ています。
朝型も夜型も、自分の体内時計を社会の時間に合わせられると問題はないわけです。ところで、たとえば小中学校の始業時間は朝早く、一般的に社会は朝型です。夜型の人はそういった一般的な社会の時間からずれ、遅れた体内時計を持っている場合が多いのです。
夜型は社会の時刻と自分の体内時計の乖離(時差ボケ)が起こりやすく、このことが不調の原因になり、朝食欠食、肥満、睡眠障害、成績不良などにつながりやすいと考えられます。また、肥満がなぜ起こりやすいかという視点で見ると、ある食事調査で、夜型の人は朝型の人に比較して菓子や脂肪分の摂取が高く、またアルコールの摂取頻度も高かったのです。
これらの食行動も肥満要因となり得ます。人間ドックのデータでも、夜型の中高年は、肥満、糖尿病、高血圧のリスクが朝型の人より高いことが報告されています。夜型の人は遅めで多めの食事を、場合によってはお酒を飲みながら過ごしているというイメージもあり、この結果に結びついている可能性もあります。
若い世代は夜型が多く、高齢になると朝型が多くなりますが、その原因はわかっていません。高齢者は習慣的にも体力的にも早寝早起きになりやすいので、そうするとますます体内時計の後退部分(夜の光)に光が当たりにくく、前進部分(朝の光)に当たりやすくなり、そういったことも要因の一つであると思われています。
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