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指令員は、異常時に迅速な対応をすることが求められますが、その上で重要になるのが情報伝達です。的確な対処をするには、異常があった現地や、線区全体の状況を正確に把握する必要があるからです。
おもに輸送指令を行なうブロックには、さまざまな情報伝達手段があり、代表的なものには、駅や乗務員区(乗務員の事務室)などと通話する指令電話や、列車にいる乗務員と通話する列車無線があります。
操作端末のテーブルには、そのための受話器も置いてありますが、指令員がデスパッチャーと呼ばれるヘッドセット(ヘッドフォンとマイクがセットになった装置)を装着して、両手で作業しながら通話することができます。また、放送用のマイクもあり、駅や乗務員区、列車の乗務員室などに同時に情報を伝える一斉放送もできるようになっているのです。
案内してくれた方によれば、指令員の間で、「指令の言葉は、支社長の言葉」と言われているそうです。指令室から列車無線や指令電話を通して伝える指令員の言葉は、それを聞く駅員や乗務員などにとっては、この指令室を代表するものになります。東京総合指令室は、JR東日本の東京支社に属し、指令員は支社長の命令を代弁することになるようです。
なお、輸送指令には、他社の指令室につながる連絡電話もあります。東京圏の在来線は、常磐線が東京メトロ千代田線、中央・総武線が東京メトロ東西線、埼京線がりんかい線と相互直通運転(相互乗り入れ)をしているので、他社との調整が必要になったときにこの連絡電話を使うのだそうです。
口頭による連絡は、指令室で長らく使われている情報伝達手段ですが、ヒューマンエラーによる伝達ミスが起きやすく、それを防ぐために復唱を行なうと、伝達に時間がかかり、対応が遅れる場合があります。このため、この指令室では、口頭以外の情報伝達手段として、ファクスや通告伝達システム、車両故障情報伝送システムなどが使われています。
ファクスは、指令員が書いた書類を駅や乗務員区に流すときに使います。例えば、常磐線のように特急列車が多い線区では、ダイヤの乱れが生じたときに、指令室の判断で特急列車とその他の列車の順序を変え、特急列車を先に行かせる事がありますが、そのままだと駅が混乱するので、指令員が順序の変更を指令計画書に書き、ファクスで駅に送信します。
通告伝達システムや車両故障情報伝送システムは、近年導入されたもので、従来、口頭で伝えていた情報を文字などに変換し、相手の端末のモニター画面に表示することができます。同じ情報を複数の場所に同時に伝えることができる上に、復唱する必要がないので、情報をより早く確実に伝えることができます。
通告伝達システムは、指令員から乗務員への運転通告や、情報を文字にして、運転台のモニター画面に文字で表示します。複数の列車の乗務員に同時に情報を伝えられるのが特徴です。車両故障情報伝送システムは、故障した車両の状態を、運用指令や車両保守部門のパソコン画面に表示するシステムです。
東京圏の在来線を走る新しい電車では、車両の故障状況を運転台のモニター画面に表示できますが、離れた場所にいる車両関連の社員も、同じ情報をパソコンで見ることができるので、的確に把握でき、乗務員への指示やアドバイスがスムーズにできるようになったといいます。
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