|
糖尿病は初期には痛くもかゆくもありません。基本的に自覚症状はないまま進行していきます。では、何のために糖尿病の治療が必要なのかと言えば、合併症を防ぐためです。糖尿病腎症、糖尿病網膜症、糖尿病神経障害の三つが三大合併症としてよく知られているほか、心筋梗塞や脳血管障害といった命に直結する病気のリスクも増やします。
そのため、「自覚症状がなくても治療しましょう」と言われるわけですが、ところが、頑張ってインスリン注射を毎日打っていても、日々糖尿病治療薬を飲んでいても、HbA1cが十分に下がり切らず、結局は三大合併症を引き起こしてしまう人がいます。
なかには、目が見えなくなったり、透析治療が必要になったりする人もいます。インスリン治療や飲み薬による治療を受けていても、です。それはなぜか。軽微な動脈硬化がずっと進んでいて、年数が経てば経つほど抑えきれなくなるからです。
平均寿命が50歳の時代ならハッピーなまま最期を迎えられたかもしれませんが、今の平均寿命まで生きようとすれば、60歳くらいから動脈硬化が進み、末梢血管が障害され、失明や透析ということになりかねません。
血糖値を下げる治療さえ行っていれば安心というわけではないのです。糖尿病は本当に薬を飲み続けなければいけないのか?今、一般的に行われている糖尿病治療の基本は、血糖をコントロールすることです。
血糖降下薬やインスリン製剤を使って血糖値をコントロールすれば、治ったのと同じ状態が保てますよ、というものです。つまり、治す治療ではありません。治ったのと同じような状態を保つために、一生、薬を飲み続けるか、インスリン注射を打ち続けなければいけない。それが、今行われている糖尿病治療の基本です。
患者も、「そういうものなのだ」と納得しているのでしょう。なぜなら、「この薬さえ飲み続けていれば副作用もなく、病気の進行を止めることができ、天寿を全うすることができますよ」と言える病気はあまりないからです。
一般的に、病気というのは一旦なったら治らず、じわじわと悪くなっていくものが多いので、「インスリンさえ打っていれば治ったのと同じ状態を保てる」という説明は、患者たちにはおおむね好意的に受け止められたのでしょう。
ところが現実的には、頑張ってインスリン注射を打ち続けても、HbA1cが10%前後にしか下がらない人もいます。そういう方は、じわじわと毛細血管の動脈硬化が進み、やがて三大合併症を引き起こしてしまうのです。
|
|