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指数関数的な変化にうろたえてしまった典型例の一つが、コロナ禍における感染者数の増加です。 実際に 感染者数がどのように推移したか。日本と米国における新型コロナ感染者数の推移として、感染が拡大しはじめるタイミングが異なっていました。
日本は2020年1月末から、米国は2月末から表示しています。また、4月以降は各国の感染予防策が効果を発揮し始めて状況が変わったので3月末までのグラフを発表しています。発表したグラフを見てみると、おおむね直線状に伸びていることが分かります。
感染者数の推移は数学的には指数関数で表されるため、片対数グラフで見るとおおむね直線になっているのです。感染者数の推移を表す数式で解くと感染者数が指数関数的に増えるという結果が出てきます。詳しい計算は省きますが、ここでは、なぜ指数関数になるのかを簡単に説明したいと思います。
1人の感染者が他の人に感染を広げてしまうとき、その平均人数を「再生産数」といいます。例えば、1 人の感染者が平均して2人に感染させてしまうとき、再生産数は2です。コロナ感染者が、同じコロナ感染者を再生産してしまうというイメージです。
再生産数が2、感染してから平均5日で他の誰かに感染させるとします。すると、感染者数は5日ごとに2倍になっていきます。少し前に書いた日記のドラえもんの栗まんじゅうの例では、個数が5分で2倍になりました。5分か5日かという期間の違いはありますが、一定期間ごとに2倍になるという点では同じです。
このことから、感染者数の推移は指数関数で表せるという仮説を立てることができます。もちろん、実際の感染者数の推移には、様々な要因が影響してくるでしょう。国の感染症対策、マスクをつける習慣、免疫の特性、年齢構成、ワクチンの普及(実際はさらにスパイクたんぱく質により感染者を増やした)等々、数え上げれば切りがありません。
しかし、理系的思考の本質は「シンプル・イズ・ベスト」にあります。シンプルに考えることで、本質が見えてくるのです。指数関数に従うという仮説に基づけば、勢いがゆっくりであるうちに対策しておかないと、あとで大変なことになると予測できますし、だからこそ、各国の専門家が警鐘を鳴らして いたのです。
日本での報道を振り返ってみると2020年3月に入って「急増」という報道が増えました。グラフを見てみると、もっと前の2月中旬あたりから指数関数に従って感染者数が増えていたことが分かるのです。感染を警戒している人が少なかったころから指数関数的な増加が始まっていたというわけです。
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