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『素粒子論の発展』南部陽一郎 岩波書店 2009年)の書物から三段階論を南部先生が短く整理した文があるので紹介します。この感激的な時期に、坂田昌一氏と武谷三男氏が、湯川秀樹氏の中間子論の展開に協力しつつ、素粒子物理の理論的研究の方法と戦略を意識して明確に打ち立て、自らも実践して成果を挙げたのです。
坂田武谷の方法論は武谷の三段階論に要約されます。物理学の、とりわけ素粒子物理の進歩は三段階の繰り返しでおこるというのです。
[第0段階] 始まりは、現存する物理法則の外にある新現象の発見からです。
[第1段階] 現象論 最初の仕事は、データを集め、その中にある規則性を見いだし、経験法則にいたる。言い換えれば、データを組織化し予言をするところまでいく。これが現象論の段階です。 (中略)
[第2段階] モデルの構築 第一段階の現象論に続いてモデルを構築する段階がきます。規則性の起源をモデルの言葉で解釈しようとするのです。そのために具体的な、しばしば仮説的な実体が導入されます。そうではなくて、モデルが数学的な形をとることもあるでしょう。(中略)
[第3段階] 決定的な理論 次の最終の段階は、種々のモデルを、精密なすべてを含む数学的な体系をなす法則にまとめあげる理論を作る、あるいは考え出すことです。この理論は、現象を定量的に正しく記述し、精密な予言ができなければなりません。(中略)
[第4段階] 第0段階への回帰 三つの段階は繰り返すと期待されます。新しい現象が見いだされて理論が壊れるとき、第0段階に戻るのです。
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