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2021年は福島原発の事故から10年の節目ですが、各地の原発で再稼働の動きが進みました。特に、気候サミットの翌週である4月28日には、福井県の杉本達治知事が、関西電力美浜原発3号機と高浜原発1、2号機の再稼働に同意を表明したのです。
この3基はいずれも運転開始から40年を超える原発であり、福島事故後にできた「原則40年、1回に限り最長で延長20年」という新規制基準において、初の運転延長となるものです。杉本知事はこの前日に梶山弘志経産相と面談しており、「将来にわたって原子力を持続的に活用していく」との言質を得ていたのです。
その後、関西電力の森本孝社長は「2030年の温室効果ガス削減、50年のカーボンニュートラルといった大きな社会の挑戦に、しっかりと活用していきたい。資源の乏しい日本にとって原子力の果たす役割は大きく、40年超のプラント(の活用)の意義も大きい」と説明しています。
エネルギー業界の幹部は「カーボンニュートラルから4%削減目標のプロセスで、政府が原発を最大限動かしていくのは間違いない」と証言しています。その間も、原発の建て替え(リプレース)推進を掲げる議員連盟が自民党で結成されました。
安倍晋三前首相が最高顧問についたり、自民党総合エネルギー戦略調査会(額賀福志郎会長)が、原発のリプレースを可能とするための提言を出すなど、原発周りが一時的に活気づいたのです。福島事故の時点で54基あった原発は、2020年時点で36基まで減り、そのうち9基が再稼働しています。
現状は、2030年の電源構成のうち、原発は20〜22%を占める目標となっており、そのためには「再稼働申請をした全27基の再稼働」が前提とされています。原発の扱いをめぐっては世界の議論は揺れているのです。
例えばドイツは、福島事故の後に原発撤退を決めましたが、その際に石炭火力への依存が高まり、「温暖化の観点から見れば、ドイツの選択は間違いだった」との指摘まで出ています。しかし、福島ではまだ廃炉の時期、費用の見通しさえ全くみえておらず、原発で事故が起きた場合のリスクは疑いようがない事実なのです。
旧来型の原発を動かし続けるのであればなおさらです。次世代原発の推進派として知られるビル・ゲイツは以下のように述べ、従来の原発活用には否定的な見方を示しているのです。「私が原子力に関わるようになったのは、気候のためです。もし、蓄電池のイノベーションに奇跡が起きたとすれば、原子力は必要なくなるはずです。」
「しかし、現在の原子炉は非常に高価で、高圧であるため、安全システムは非常に複雑です。そのため、全く新しい世代の原子炉が必要になります」気候変動を経済変革の機会として捉えるのであれば、仮に旧式の原発再稼働が短期的に必要だったとしても、数十年後を見据えた次なるイノベーションへつなげることが重要なはずです。
しかし、エネルギー基本計画では、老朽化した原発の建て替え、新設、増設は盛り込まれないことが決まったのです。
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