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星間ガスから様々な質量の星が生まれ、それぞれの一生を終えて、再び物質を星間ガスに返します。これが銀河の中で何世代にもわたって繰り返されています。それはあたかも、地球上で人間をはじめとする様々な生命が生まれ、やがて命が尽きると土に還ることを彷彿とさせます。また、生命の活動はその母体である地球の環境にも影響を与えます。
過去数十億年にわたって徐々に地球大気の中で酸素が増えてきたのは、植物による光合成のおかげでしょう。そして今、産業革命以降の人類の活動のために大気中の二酸化炭素が増え続けています。銀河もまた、星が生まれ続けることで徐々にその姿を変えていきます。
星間ガスは星に転化することで徐々にその量を減らします。一方で、超新星爆発から放出された重元素のために、星間ガス中の酸素や鉄の量は徐々に増えていきます。星が生まれ死ぬことで、銀河の進化が進むのです。
宇宙の年齢が約1億年の頃に最初の星が誕生します。これが、銀河形成の歴史が始まる瞬間です。一方で、宇宙大規模構造の形成は暗黒物質の重力によって脈々と進行しています。重力を支配し、星や銀河を作る原動力となりながら、自分自身はあくまで黒子として粛々と我が道を行くといった風情であろうか。
より大きなハローが登場し、より多くのバリオンガスがそれらに取り込まれることで、星形成の原料となる物質が増えていくのです。このため、宇宙全体での星形成活動はどんどん活発になっていくのです。
遠方の銀河の観測から、宇宙全体での星形成活動がそのピークを迎えるのは、ざっと宇宙誕生後20億年から50億年といったところ、赤方偏移で言えば3から1程度の時代であることがわかっています。
初代の星や銀河が誕生してから現在までを朝から夕方までの1日になぞらえて、この時代を「宇宙の正午」 (cosmic noon)という言い方が研究者の間で最近流行っているといいます。初代の星が生まれた頃は「宇宙の夜明け」 (cosmic dawn) です。
このピークを過ぎると、宇宙全体での星形成活動は下火になっていくわけですが、それにはいくつかの理由があります。暗黒物質ハローに取り込まれたガスは、時代とともに高温で低密度になっていきます。
そのようなガスは冷えにくいため、星が生まれることもなくなります。このような状況になっている典型的な例が、銀河団です。我々の銀河系のような立派な銀河が数百あるいは数千という数で、重力で束縛されて密集している領域を銀河団といいます。
重力で束縛された一つのシステムとしては宇宙で最大のものです。その総質量は実に太陽の1000倍にも及び、その大半が暗黒物質です。もちろんバリオンガスも存在し、銀河団の強大な重力のために1億度もの高温にまで加熱されて、X線で輝いて見えるのです。
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