北斗が東京時代に親交のあった民俗学者・中山太郎の著書『日本巫女史』に北斗についての記載があります。
第一篇 第七章 第二節 (略) アイヌ民族の間に行われている神標(カムイシルシ)の信仰は、極めて神聖なるものであって、家長以外には絶対に知らせぬ事として、今に厳重に秘密を守り、家長が死ぬときに始めて相続人に告げ知らせるほどの大切なものであるが、然もその神標(カムイシルシ)とは、死者に持たせてやる其の家の合標(アイジルシ)であって、アイヌは死人が出来ると、急いで家々に伝わる神標(カムイシルシ)を木の板に彫り付けて死者の肌に付ける。これさえ持って往けば、霊界において祖先が己れの子孫であることを知って保護してくれると信じているのである〔二一〕。 (略) 〔註二一〕 アイヌに生れて和歌をよくした故違星北斗氏から承った。猶お此の機会に言うが、アイヌ民族は立派にトーテムを有していて、今にその信仰を貽している。而して違星氏の談によれば、そのカムイシルシを見ると、本家、分家、新宅などの関係がよく判然し、更に溯ればその家々のトーテムまで判明するとのことであった。故違星氏は、手宮駅頭の古代文字と称せらるるものは、アイヌのカムイシルシであるとて、此の研究にも手を着けられていたのであるが、完成せぬうち宿痾のために不帰の客となられたのは遺憾のことであった。
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