|
西川光次郎の手紙でもそうですが、北斗はまだ親しくなっていない頃には非常に慇懃で角張った候文を書くようです。
拝啓 先日は突前参上致し種々御厚情接し殊に有難く厚く御礼申し上げ候 戴きました「アイヌ研究」 は除に拝読致し居り候
といったぐあいです。 金田一の「違星青年」に描かれているように、北斗は、金田一の元に、本当に突然参上しました。 それも夜です。一日中、成宗の家を一軒一軒まわって、田んぼにはまって、泥だらけになって。北斗のいきあたりばったりの、愛すべき無鉄砲さがよく出ていると思います。 北斗は、最初の訪問の際、金田一の「アイヌ研究」という本を金田一から受け取ったようです。(このハガキの時点では、まだ北斗は知里幸恵の「アイヌ神謡集」を手に入れていないようです)。 そして、「アイヌ研究」を読み、感動します。
我等民族の為めに熱誠な同情なして下した先生を私しは 神様として感謝いたさねばなりません 私しはアイヌを斯くまで深遠な研究は誰れも為して ゐないものとのみ思い居り候
これはまた、「神様」とはオーバーなように見えますが、それほど感動したということなのでしょうか。
|