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松木淳(まつき・あつし、1904〜1984)
「荊の座 松木淳詩歌集」
屑っ切れのうた 1931
読み終りわれ眼を閉じて思うこと 違星北斗の遺稿コタンを
彼が持ちしアイヌの悩みと わがもてる 悩みと深く通うものあり
悩みつゝ北斗は逝けり いたましや 彼をうばひし病に吾も病む
去り行ける違星を惜しむ 生けるうち 知りなばわれもたよりせんものを
去り逝ける 違星北斗よ君が胸の 深き悩みの われにはわかる
去り行ける違星北斗よ 君が霊に われも心を捧げて誓う
短かゝりし二十九年のいのちなれど 違星北斗は コタンに 光る
同族を想ひて夜を泣き明せし 違星よ われも泣き明すもの
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