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帰宅。 スマホでは中途半端なMMOが自動レベリング中。 PCの電源を入れる。 Youtubeでも、と思ったところで画面が暗転し、 モニターに見覚えのある、懐かしい顔が映し出された。
よお。 久しぶりだな。元気だったかい? なんだよ、そんなすっとんきょうな顔して。 俺の顔に何かついてるか? でもまあ、驚くのも無理ねぇか。 あれから随分経っちまったからなぁ。
で、どうなんだよ、元気なのか? ……そうか、そうだよな。お互い、心配するまでもねぇよな。 12時間耐久望郷とか言ってバカやってたあんたのことだ。 何があっても、何とかしてんだろうなとは思ってたよ。 ああ、言っとくが、あれは褒められたことじゃねえ。 可哀想に、ザイゴウなんて最後の方は台詞も棒読みだったし、 フィーンはしばらく愚痴ってたぜ、あんた達が夢に出て来るって。
おっと、話が逸れちまった。 今日来たのは、ちっと報告があってよ。 あー、何だ、まあ、あれだ。 その、つまり、結婚することになってな。 相手は……あんたもよく知ってる奴だよ。 ま、ネングノオサメドキってトコだな。 ん? ああ、これ、あんた達の世界の言い回しだっけ? 結構気に入ってんだよ。 あんた達が帰っちまってからもいろいろ残っててさ。 こないだあの傲慢エルフが「大草原ね」なんてつぶやいてるのを 聞いた時は吹き出しちまった。 とにかく、そういう訳なのさ。 あんたにはいろいろ世話んなったし、あんたにだけはどうしても 伝えときてぇと思ってな。神サマに頼んで繋いでもらった。 ああ、クォパティの方じゃねえぜ。アラハウィの方さ。 「さぞあの人にも報告したいでしょうねぇ……クックック。 私が手助けして差し上げてもよろしいのですよ、えぇ。」 なんて言ってきやがったのさ。昔からいけ好かねぇ奴だったが、 まさか神サマだったとはなぁ。
それで、だ。 あと何年かして、もしかすると、あんたの子供と俺の子供が どこかの街でばったり出会う、なんてことがあるのかもしれねぇ、 なんて思っちまって、な。 そしてそん時は俺達みたいに……いや、俺達とは違って…………
おっと、時間みてぇだ。その神サマが呼んでる。 今回の見返りに手伝えって言われてんだ。 なに、大したことじゃねえよ。チコルの宝箱がどうとかって 言ってたな。今更チコルもねぇもんだとは思ったが、 楽そうだしいいかな、ってな。
今日は逢えて嬉しかった。
……じゃあな、相棒。 元気でやれよ、約束だぜ。
画面、明転。
彼らの子供達が、とあるVRMMOで出会い、幾多の冒険に 挑むのは、もう少し後の、また別のお話。
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