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壮年期は、何といってもメタボや肥満を予防することが、循環器疾患を予防することになり、健康寿命の延伸につながります。ある大規模コホート研究において、興味深い結果があります。
コホート研究とは、ある特定の疾患の起こる可能性がある要因を考え、対象集団(コホート)を決め、その要因を持った群と持たない群に分け、一定期間追跡し、その要因と疾患との関連性を明らかにする研究方法です。
この研究によって「食事バランスガイドを遵守した食事は循環器疾患死亡率や総死亡率を低下させた」こと、「いわゆる欧米型の食事パターンの食事が多いと、大腸がん、前立腺がん、乳がんのリスクを高める」ことが明らかになってきました。
なお、この3つのがんは、シフトワークに長年携わる人が罹患するリスクが高くなることも知られています。朝食を摂らないとメタボリックシンドロームのリスクとなり、肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの危険因子が増すことは多くの研究で示されてきました。
一方で、脳卒中や虚血性心疾患に対する朝食欠食の危険性についてはよくわかっていませんでした。脳卒中には、主に脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血があります。ごく最近、ある多目的コホート研究 (小室一成ら。 Atherosclerosis, 2021) により、13年間の追跡調査による朝食欠食との脳卒中や虚血性心疾患との関連性についての調査が報告されました。
「開始から5年目に実施した生活習慣に関するアンケート調査」に参加した74歳までの男女約8万人を対象とし、朝食摂取回数が週に0〜2回、3〜4回、5〜6回、毎日という4つに分けています。
追跡期間中に、3772人が脳卒中発症と診断され、870人が虚血性心疾患と診断されました。そこで朝食を毎日摂取する人と、週に0〜2回しか摂取しない人の発症リスクを調べると、脳卒中全体で18%、脳出血にしぼると30%も危険率が増していました。
脳梗塞、クモ膜下出血、虚血性心疾患については、このような差は見られなかったということです。なぜ脳出血に対して朝食欠食が大きく危険因子を増したのでしょう。もちろん脳出血は高血圧に関係しますが、体内時計との関連では、特に早朝の急激な血圧上昇が危険因子となります。
朝食を欠食すると空腹によるストレスなどから血圧が上昇しますが、この上昇は朝食を摂れば改善されます。そのことから、日常的に朝食を摂らない人は朝に高血圧になりやすくなっており、それが脳出血の危険因子になっていると思われます。一方、夜遅い食事は肥満や冠状動脈性心疾患のリスクを高めることもよく知られています。
これらのリスクを避けるためには、炭水化物・タンパク質・脂質ならびに食物繊維やビタミン・ミネラルなどのバランスの良い食事を心がけ、朝食はしっかり摂り、遅い夕食は避け、どうしても夕食が遅い場合は、分食したり質の良い間食を摂ったりすることで、夕食時の血糖値スパイクを回避するといったことを心がけたいところです。
シフトワークや不規則就労になる場合は、食事パターンが不規則になる可能性があります。 食事パターンが不規則化したモデルマウスの研究では、肥満や脂質異常症、炎症性サイトカイン(炎症反応を引き起こし、病原体を排除する働きがある物質)による反応が強く出ることが知られています。なるべく規則的な食生活を送ることをおすすめしたいと思います。
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